リスクマネジメントの取り組み

つくしんぼ学級(2016年3月)

 

つくしんぼ学級 気づきメモの取り組みから

 

 つくしんぼ学級は、昭和50年8月、発達につまずきや偏りがあるお子さんに、専門的な早期療育を行う場として開設されました。平成16年4月に現在の北斗市追分に移転し、平成24年度より児童発達支援センターとなり、平成27年度は、児童発達支援、保育所等訪問支援、障害児相談支援、日中一時支援の4事業を行っています。児童発達支援では、3歳児6名、4歳児14名、5歳児20名の計40名のお子さんが通園しています。1クラスは、園児10名に、職員が4名配置されており、全部で4クラスです。保育所等訪問支援では、渡島管内の8か所の保育所や幼稚園等に在籍する12名のお子さんの療育を行っています。障害児相談支援では、日々のご家族の相談にのり、お話を伺いながら、児童発達支援、保育所等訪問支援、放課後等デイサービスを利用したいというお子さんに対しての「障害児支援利用計画」を作成し、定期的にモニタリングをしています。日中一時支援は、在園児と地域の4名の就学前のお子さんが利用しています。

 

つくしんぼ学級の取り組み

 幼児が利用する事業所であるつくしんぼ学級は、「児童虐待防止法」と「障害者虐待防止法」のどちらの法律にも関連します。これまでは、児童虐待について考える時には、園児に支援や保育をする職員の立場から家庭内での虐待をいかに早く発見して対応するかということに重点が置かれていました。しかし、「障害者虐待防止法」では、障害者虐待の中に、障害者福祉施設従事者等による虐待が定義されており、事業所の職員も虐待の主体になり得るということが示されました。これを受けて、つくしんぼ学級では、合理的配慮と不適切な対応について職員間で話し合う機会を持つことにしました。

 つくしんぼ学級では、療育後に職員が集まって、一日の療育を振り返りながら、活動内容、園児への支援方法、環境設定について、話し合いをする時間を作り、話し合った内容はクラス日誌に記入しています。今年度からその話し合いの時間に、職員の支援の仕方や環境設定を振り返りながら、園児に対して不適切なかかわりになっていなかったか、という視点で話し合う時間を作りました。クラス日誌にも、「合理的配慮(不適切な対応になっていなかったかどうかの振り返り)」という項目を加えて、話し合った内容を記録に残しました。また、月ごとの療育についてまとめる、月反省の書式にも、「合理的配慮」という項目を作り、職員会議で各クラスから報告して、職員間で情報を共有できるようにしています。

 

不適切なかかわりだったのではないかと職員が感じた対応の例
園児の要求に応えられなかった。また、すぐに応えられずに待たせてしまった。 ・給食の時間に空席がなく、空腹を感じている子を食事に誘えずに待たせてしまった。

・「○○行きたい」「○○と遊びたい」「一緒に遊びたい」「水飲みたい」という要求に、対応する職員がすぐに応えられず、玩具を投げる等の不適切な行動を助長させてしまった。

園児が意思表示しやすい環境を、整えられていなかった。 ・おやつの場面で、コミュニケーションボードに、要求を伝える相手の職員の写真を貼り忘れたため、「ごちそうさま」を訴えられなかった。

・職員が園児の「トイレに行きたい」という訴えに気付けずに、失禁させてしまった。

園児に適切な行動を促したり、集団生活や日常生活のルールを伝えたりするために、本人の意思に反する促しをした。 ・外気温が低い日に、ジャンパーの着用を嫌がる子に、本人は着用する必要性を感じていなかったが、体を支えながら着せた。

・玩具を投げていたので、投げるという行動を間違って学習しないために、その玩具を遊びのエリアから片付けて無くした。

・朝の会に参加し、楽しかった活動に「繰り返し取り組みたい」と訴えたが、あらかじめ設定した回数を取り組むことを伝えるために、その思いには意図的に応えず活動を終えて、予定していた次の活動に取り組んだ。

園児が新たな経験をすることを促すために、本人の意思に反する促しをした。 ・水着の着用を拒否して泣いていたが、水に入れば楽しめると考えて、水着を着せて水遊びに誘った。

・トイレトレーニングの時に、本人の意志に反して、長めに便座に座ることを促した。

・朝の会を行う場所への移動を拒否することがあったため、大人が手を引いてその場所まで移動して、活動内容を本人に見せて確認してから、参加するようにした。

時間・場所・人・道具等の制約があり、本人の意思に反する行動を促さざるを得なかった。 ・バスへの乗車を拒否していたが、バスの出発時間に間に合わなかったので、職員が抱っこをして乗車した。

・使いたい玩具が他児と重なって取り合いになり、職員が仲介して、回数や時間を決めて遊ぶことを提案したが納得できなかったので、トラブルを回避するために、園児の一人が別の遊びの場所に移動した。

活動の準備や環境設定に不足している部分や間違いがあり、園児を不快な気持ちにさせた。 ・給食時に、体形に合わない小さなテーブルを用意してしまい、足がテーブルの下に入らず、横を向いて食べていた園児に、「前を向いて食べてね」と職員が声を掛けた。

・園外に出かけた時に、飲み物(水)を用意し忘れて、水分補給ができなかった。

・手袋に穴が開いていることに気付かずに、そのまま雪遊びをしていた。

園児の安全を確保するために、本人が不快に感じるような対応を職員がした。 ・地震発生時にマットの下に園児数名で潜った時に、他児との距離が近くなって、手が出そうになった園児に対して、職員がその行動を制止するために強い口調で名前を呼ぶことがあった。

・バスから園児が一人で降りて行こうとして、危険を回避するために止めようとした時に、職員の手が園児の体に届かなくて、咄嗟にジャンパーのフードをつかんで行動を止めた。

園児やご家族の気持ちへの配慮に欠けていた。 ・職員間で話をしている時に、ご家族が呼ばないような愛称で園児の名前を表現した。

 

まとめ

 改めて振り返ってみることで、これ以外の方法があったのか、この場面では他の職員でも同じ対応をすると思われ不適切な対応の範疇ではないのではないか等、お互いの対応を見直すきっかけにもなっています。

 不適切な行動の積み重ねが、虐待に繋がると言われています。虐待を防止するために、普段から職員が自分の行動を振り返り、園児への支援や環境設定に対して、合理的配慮ができているかということを考える必要があると思います。そのためには、職員間で話し合いお互いにコミュニケーションの取りやすい職場の環境も必要であると、今年度の取り組みを通して感じました。支援する私たちも人間ですので、時には間違えることもあると思います。普段から何でも話せる職員同士の関係を作っておくことで、万が一不適切な行動をしてしまったとしても、その行動について話し合い、早期に見直すきっかけが作れると思います。職員間でお互いにフォローできる職場環境を作りながら、今後も虐待を防止し、園児へのより良い支援を目指していきたいと思います。

 

(2016年3月 つくしんぼ学級)

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。