リスクマネジメントの取り組み

侑愛荘

 

リスクマネージャーのコラム

 

「侑愛荘の取り組みから」

 

事業所の概要

 

 侑愛荘は、おしまコロニーのなかでも特に高齢期の方を対象とした入所施設として、昭和51年に開設されました。開設当初の侑愛荘は高齢期といっても平均年齢は45.6歳であり、まだまだ利用者の皆さんもお元気で働き盛りでした。それが平成26年10月現在では侑愛荘の平均年齢は70.6歳となっています。知的障害者支援施設で、侑愛荘ほど平均年齢の高い施設は全国的にも極めて稀だと言えます。

 

 そんな侑愛荘では、利用者の皆さんの様々な障がい特性に加え、高齢化によって生じる要因もあり、事故発生頻度はとても高くなっています。侑愛荘では3大事故として「転倒・転落」「誤薬」「誤嚥」を特にリスクの高いものとして考え、対策を考えています。

 

 「転倒・転落」は後のADL(日常生活動作)に大きな影響をもたらします。高齢化による機能低下が見られる方々にとって、転倒によって骨折等の怪我を負ってしまうことは、車椅子生活や寝たきり等の引き金となってしまうためです。原因として考えられるのは、筋力・バランス感覚の低下が一番ですが、高齢期に入った利用者の方々は、自らの身体的衰えに気付くことがとても苦手だと言うことも大きく影響します。長い人生の中で体に染みついた立ち上がり方・歩行スピード等を抑えることが難しく、転倒・転落事故へとつながってしまうため、事故の発生を未然に防ぐことがとても難しいのです。事実、数年前までは最も発生頻度の高い事故でした。

 そのため、侑愛荘では転倒・転落を未然に防ぐ為の「見守り」「付添い」等の個別対応を行っているほか、転倒してしまった場合に大きな怪我に繋がらないよう、周囲の環境面で角のある部分には保護テープを貼る等、予防と事後の対応の両面からのアプローチを行っています。その成果か、近年では転倒・転落事故は減少傾向にあります。

 

 続いて「誤薬」についてですが、一言に誤薬と言っても、事故発生の機会は多岐に渡り、投薬を取り扱う機会全てに潜んでいます。侑愛荘では投薬の管理はすべて職員が行っているため、発生する誤薬事故は全面的に職員に非があると言えます。ということは対応次第で限りなくゼロに近づけられる事故であると言え、対策として投薬の作成と確認では複数人の眼によるチェックを実施し、服用時には確実に飲み込んだか、周囲やコップの中に落ちていないか、見守りと確認を強化しています。また、服用前に対象の方の名前を読み上げ、確実な本人確認を行ってから介助をする等、いくつかの約束事を徹底することでも対策としています。

 

 「誤嚥」は食べ物が気道に詰まって起こる場合等によって発生しますが、発生した場合生死に直結してしまう重大な事故となりえます。何よりも予防が大切なことであり、侑愛荘では「食事検討チーム」を組織し、食事の形態や介助法、椅子やテーブルに至るまで、利用者の方一人ひとりに合った形態を模索しています。

 

 また、虐待防止の取り組みとして、平成25年度より虐待防止検討チームを発足させています。虐待に対する知識の浸透と虐待を起こさないよう相互牽制できる環境づくりのため、平成25年度には職員会議の場での講義のほか、自分たちの行ってきた支援を振り返りながら、虐待に関しての意識調査アンケート等を行いました。今後もチームが主導となって定期的に勉強会や事例検討等を開催し、虐待を起こさない施設である為に活動していきたいと考えています。

 

 侑愛荘では上述の食事・虐待防止のほかにも、入浴・排泄・施設連携の計5分野において検討チームを組織しており、支援の質の向上、リスク軽減に向けた取り組みを行っています。これから人生の晩年を迎える皆さんにとって、「良い人生だった」と感じて頂けるよう、研鑽を続けていきたいと考えています。

(2014年11月 侑愛荘)

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。