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例年行われている、社会福祉法人侑愛会 リスクマネジメント委員会主催の研修会を今年度は、南北海道知的障がい福祉協会と共同開催し、埼玉大学教育学部准教授 宗澤 忠雄先生をお招きしています。
参加者は、スタッフを含めて、100名以上となり、かなでーるの会場が狭く感じるほどの方々が参加をしています。
宗澤先生には、「知的障がい児者の権利擁護・虐待防止と意志決定支援について」と題して、講演をして頂いています。
まず、第1章「障害のある人の権利と意志決定支援」では、権利条約を中心に述べられています。合理的配慮とは、それぞれの人が自由と権利を享受し、行使するために必要な個別的で特別な環境上の配慮である。かみ砕くと、必要かつ適当な変更及び調整であったり、特定の場合に必要とされるものであったり、過度な負担のかからないものであったりします。つまり、何が合理的で、何が過重な負担であるかは、ケースバイケースなのです。また、合理的配慮には、基礎的な環境整備が大切です。例えば、合理的配慮の基礎となる環境整備としては、静かな環境、落ち着いた住まい、安心と信頼のある支援者との関係、差別や虐待のない地域社会が必要であり、それぞれの人にふさわしい環境の調整という点では、例えば、Aさんには、絵カード、Bさんには、タブレット端末となります。
支援付き意志決定の原則としては、全ての人に意志決定の能力があるという考えに基づき、意志決定ができないと判断する前に、あらゆる意志決定のための支援をしなければなりません。ある知的障がいのある方から、「50万円の一眼レフカメラ・レンズ2本のセットを買いたい!」という要望があった場合でも、周囲が不合理だと考え、意志決定できないと判断し、買わないと代行意志決定することは、権利条約違反となります。
第2章 「知的障がいのある人と意志決定の能力」では、意志決定能力は知能指数、発達指数や発達年齢によって一律に決まる力ではなく、人との相互作用やコミュニケーションの積み重ねにより、伸びていくものである。また、経験の質によって、百人百様の表れ方をみせることから、多様な意志決定に対する支援には、先程の「コミュニケーション支援」(障害特性、ニーズ、能力にふさわしいやりとり)、「情報提供・獲得支援」(情報を操作せず、本人の選択できる情報を提供)、「価値付け・思いこみの容認とバランス」(成功体験や失敗体験の質、経験値など)、「意志決定につきまとう葛藤」(悩む力、欲求不満耐性)、「客観状況の変化」(過去の意志決定を相対化する)と、このようなことへの支援が必要性なことから、意志決定支援の専門家の養成が重要課題となっている。
第3章 「意志決定支援を進める」では、知的障がいのある人へのアプローチの基本として、言語性メモリーは、知的障がいのある人は小さいため、視空間性メモリーを意志決定支援に活用する。また、足りない力をサイン、シンボル、文字などの何かに置き換えて、補う手だてを使うことも必要である。さらに、シンボルとVOCAを組み合わせたアプリ「Drops」やインターネット、FacebookなどのSNSを含めた支援も重要になってくる。この中でも、特に知的障がいの重い人には、支援者と障害者が相互に関わり合うことによって、言葉やコミュニケーションを学んで行く、インリアル・アプローチによる働きかけや観察によって、行動の意味を読み解く、トランスクリプトを用いて、積み重ねていくことも必要ではないだろうか。これらの考え方の基本として、百人百様の支援を進めるためには、このツールを使えば必ずうまくいくという考えは間違いである。それぞれの人にふさわしい配慮が、合理的配慮となる。
最後に、宗澤先生のお考えとして、
・意志決定支援ビジネスの蔓延に抗議をし、歯止めをしよう。
・合理的配慮は、障害者差別を克服するためのものである。
・コミュニケーション、意志決定支援の無償化が、当たり前の権利となるよう運動しよう。
・家族が安心できる意志決定支援制度を確立させよう。
と、熱く語られていました。
リスクマネジメント委員会 責任者 川又賢一