リスクマネジメントの取り組み

星が丘寮におけるリスクマネジメントの取り組み

 

 星が丘寮は、現在、60名の障害者支援施設として、生活と日中活動を一体的にサポートしている入所施設です。利用者の多くは、自閉症の特性を伴った方々で、365日24時間のアセスメントを中心とした個別支援を展開しています。個別支援を展開するためには、利用者一人一人の特性を正しく理解することからスタートし、個別の学習スタイルに応じて、わかりやすく情報を提示するなど、コミュニケーションスキルの獲得に向けた支援を基本として、その人の生活スタイルに合わせたサポートを実行しています。

 

・平成28年度 上半期事故報告件数 26件(H28年4月〜H28年9月)
服薬 飛び出し 転倒 異食 他傷・受傷 破損
3件 13件 1件 6件 2件 1件

 

平成19年に服薬マニュアルを作成したことにより、服薬ミスは軽減されてきましたが、現在においても全てを解決するには至っていません。ミスに至る要因としては、マニュアル通りに取り扱いを行っていても、それ以外のところでの確認不足や連携ミスによるところが多いことがわかってきました。そこで、その都度、服薬マニュアルの改訂を行っています。今回は、現在のマニュアルに至るまでに、どのようなことを考えて変更したのかについて報告させて頂きます。
服薬に関する事故は、利用者の健康に直結することから、星が丘寮では重点課題として対策を講じてきました。 平成28年4月から9月までの事故報告では、飛び出しに関する事案が13件と最も多くなっています。次いで、雑草の異食が6件、服薬に関する事項が3件報告されています。

 

・投薬事案に関する事故報告
場面 場所 内容 原因
昼食後 食堂 眼科受診後に急遽処方された薬包の添付忘れ 事前準備確認不足、服用時の確認不足
午前余暇時 勤務室 朝に処置する座薬が残っている。 事前準備確認不足、勤務者連携不足
外出先 外出先 飲食店に到着後、薬包忘れに気付き取りに戻る 事前準備確認不足

 

 
旧マニュアル 新マニュアル
座薬に関するマニュアルなし 薬包対応同様に、個別に準備されている薬用のジッパーへ入れる。
服用場面時の注意事項の明記なし 服用場面時の確認、約束事を明記するとももに、文字のみではなく、具体的な動きがイメージ出来るよう、絵コンテも加える。
服用後の個人毎薬包を確認 各個人毎の薬包入れより、服用担当者とは違う職員が、服用済みの薬包を確認することを明記。又、全服用場面における薬包確認後は勤務者間で正しく服用されたかどうかを、声に出して相互確認することを明記する。

 

・旧マニュアルから現在のマニュアルの変更点

 1)これまでは、目薬や座薬などの服薬以外の手続きに関する事項がありませんでしたので、その取り扱いについて追加しています。

 2)服薬場面での注意事項の明記がなかったため、付帯的な行動に落とし込んで手順を示しています。

 3)服薬後の取り扱いについて、具体的な行動レベルに落とし込んで明記しています。

 4)その他、取り扱いの手順について、直感的にイメージできるようにイラストを用いて示しています。

 服薬場面における服薬方法の周知(具体的な職員の動きがイメージできるように)

 

服薬場面における服薬方法の周知イラスト

 

終わりに

 

 星が丘寮では平成27年度より利用者の方々の生活の安心・安全はもとより、生活の質の向上を目的として各職員の気づきに着目した「気づきアンケート」を導入しています。その記述内容から予想される事故に対してその都度対応を行ってきたことで、実際のヒヤリハット・事故に至らなかった事例であったり、より豊かで安心・安全な暮らしへ向けた取り組みがあると考えています。 しかし、気づきアンケートの提出件数は減少している状況であり、提出に対しては積極的な働きかけが必要だと考えています。利用者の方々の生活の質の向上に向けた取り組みでもありますが、自由記述の中から、リスクに関する内容の精査と、リスクマネジャーへの情報提供を図りタイムラグのない改善へ向けた取り組みに生かしていきたいと考えています。

 (星が丘寮)

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。