リスクマネジメントの取り組み

函館青年寮

 

リスクマネージャーのコラム「函館青年寮の取り組み」

 

事業所の概要

 

 「函館青年寮」は、昭和50年に開設された入所更生施設(現在の定員は40名)です。ユ ニットケアによる生活単位の小規模化や完全個室化された住環境を生かして、集団生活で ありながらも個別配慮を優先した生活支援を行っています。また都市部にある立地条件を 生かし、グループホーム等の設置などの地域移行支援やそのバックアップに取り組んでき ました。更に通所部の併設による在宅支援、同一敷地内にある「ワークショップはこだて (通所授産)」等との連携を図りながら、利用者一人ひとりが生き生きと“暮らし”、“日 中活動”に取り組むことが出来るよう、日々その支援の充実を目指しています。

 

リスクマネジメントの取り組み

 

 “取り組み”と胸を張ってその成果をご紹介出来るものはありませんが、「函館青年寮」 のリスクマネジメントにおける現状と課題についてお伝えしたいと思います。

 平成13年の全面改築の際には、近い将来訪れる高齢化や障がいの多様化への対応を見据えて、全面 バリアフリー構造はもちろん、設備の細部に至るまで、暮らしの“安全、安心”をより保 証するための各種工夫をしました。その建て替えから現在まで10年が経過しましたが、 「函館青年寮」はこの春、利用者の平均年齢が50歳を超えました。この数字は現在おしまコロ ニーの入所施設の中でも、侑愛荘に次ぐ高い数字となっています。建て替えをする前から、 こうした高齢化の波が訪れることは予想してはいたのですが、それに伴う医療や介護ニー ズの高まりは想像を超えた部分もあり、その対応に日夜悪戦苦闘している現状となってい ます。

 

 毎日の申し送りで、居室内での転倒報告が以前よりも多く聞かれるようになりました。利 用者の状態像は様々ですが、居室は全て個室でプライバシーに配慮されたものとなってい ます。“施設という集団生活の場でありながらも、一人ひとりの個別配慮を重点に考える ”ために、ハード面における最低限の個別配慮を実現したこの個室ですが、生活を管理す る側の立場から言えば、それは目の行き届かない密室空間となります。報告の殆どは擦り 傷程度の軽微なものですが、一歩間違ったら重大な事故になることが予想されるケースも あり、冷や汗が出るような思いになることもあります。もちろん、転倒の可能性がある足 腰の弱くなってきた方達や不意の発作がある方などには、トイレなどへの移動の際にはナ ースコールで支援者を呼んで欲しい旨を普段から説明していますが、中には知的に理解が 難しい方もいます。だからといって居室のドアを開けっ放しにしたり、車椅子移動を強制 することや行動の一々を見守りという名の監視で行動制限するのもおかしな話です。

 

 普段から利用者一人ひとりのリスク要因を分析して事故防止に努めたり、支援者の様々な 気づきを全体で共有したり環境上の工夫をしたりと日夜その対策に苦心しています。個人 の尊厳や権利を保障することと、同時に安全、安心を保障することは、完成することの無 いパズルを組み立てるような思いに駆られることがあります。両者のバランスを探りなが ら事故をゼロに少しでも近付けられるよう、個別のリスクマネジメントのあり方を考え続 けています。

 

(2011年11月函館青年寮)

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。