リスクマネジメントの取り組み

平成23年度研修会 「リスクマネジメントの概要」新任・中堅職員向け研修

 

リスクマネジメント研修会

 

 リスクマネジメント委員会主催の研修会が開催されていますので、内容などをお伝えいたします。

日時  平成23年9月22日(木) 13:00〜16:00

場所  地域交流ホーム「夢」

テーマ  「リスクマネジメントの概要」(新任・中堅職員向け研修)

講師  函館市地域包括支援センター西堀 管理者 齋藤眞樹氏

内容は以下のとおりです。

 

事故のリスクマネジメントをどうとらえるか。

 ・介護( 支援、介助) 事故は、なるべく最小限に予防をする。

 ・起きてしまった事故等から教訓を導き出し、積極的に今後のサービス提供に結びつける 事を利用者と共に検討をする。

 ・介護事故の予防のためのリスクマネジメントを事業者と利用者、家族あるいは第三者と の相互理解の中で図っていくことが、『適切なサービスの保障』へとつながる。

 

福祉サービスにおける法的責任

 ・適切なサービスを提供する義務

 「利用者が高齢であり、自らリスクを抱えている」→ 利用者がサービス利用中に、安全に生活が出来るように、配慮する義務がある。これは、それまでの生育歴や病状からみて、予想すべきである。「介護職としての専門性」が必要。

 

リスクマネジメント

 ・アセスメント、ニーズ〜 適切な情報収集と適切な評価をすることで、予見する義務がある。

 ・ケアプラン( 個別支援計画) 〜 予測したリスクに対する計画を立て、回避をする義務がある。

 

事故事例

 ・転倒、転落→歩かないようにする? 自立低下と権利侵害につながる。

日頃のアセスメントによる情報内容と事故の兆候によって、一定時間に おける常時の監視強化をする。

 ・誤嚥→監視義務や見守り義務がある。「食べやすさ」「おいしさ」の問題も含ま れている。

日頃のアセスメントとモニタリングを行い、定期的な利用者の嚥下困難等 の状況の把握と検討をして、安全な利用者の状況に即応した内容の食事や サービスを提供する。

 ・無断外出→ 監視義務、見守り義務、捜索義務、管理義務がある。

日頃のアセスメントとモニタリングを行い、普段と変わった様子がないか を確認する。

安全かつ異常な事態を想定した行動への設備を設置する。

 ・施設管理→ 快適性、安全性、自立性とのバランスがとれた安全な施設設備

日頃のアセスメントとモニタリングを行い、支援、介助の中で段差、転倒、 転落等をしないように設備へ注意をはらう。

 

予想される事故防止

 利用者を中心として、職員同士で利用者の情報の周知徹底を図り、連絡のあり方を重要 視する。また、情報が共有されたチームワークが大切である。

 

予想される介護事故防止

 ・介護現場の事故を減少させるために、

 ①現場でのヒヤリハットの事例を収集する。

 ②小さな事故を大切にし、そこから職員が学ぶ。

 ③体験に基づくリスクマネジメントのマニュアルを作成し、実行する。

 ④職員全体で年数回の研修会を行う。

 

施設におけるリスクマネジメント

施設サービスとリスク

 ・人が身体的、心理社会的な様々な障害によって、日常の生活を維持し、継続することが 困難な状況に対して、主に生活を維持継続できる環境条件を整え、援助技術、医療など を提供しながら、本来の人間らしい生活の回復、獲得を支援する機能。

 ↓

 施設でのサービス提供そのものが「危険」と隣り合わせである。

 

 ・リスクを前提に

 「生活の質を提供」

 「福祉援助を必要とする様々なリスクを改善」

 「安心して生き甲斐をもって生活」できるような支援をする。

 

事故の実際と内容

 ・転倒、転落

 どんな場面で起こるか→ 利用者自身と職員の介助によるもので起こる。

 利用者がどうした時に起こるか→ 立ち上がるとき、立っているときなど。

 

 ・日常生活

 何が原因で起こるか→ 移動、食事、入浴、移乗、排泄、整容。

 利用者がどうした時に起こるか→ 移動、食事、入浴、移乗、排泄、整容。

 

 ・感染

 どんな感染症が起こるか→ ノロウイルス、疥癬、インフルエンザ

 原因があるか→ 利用者側、施設側

 

 ・医療ケア

 医療ニーズがあることで、どんなリスクがあるか

  支援、介助が増える。

  様態が悪化、急変するリスク

 ①適切な観察、介助

 ②医療職との連携

 ③状態変化への適切な観察と判断

 ④緊急時の対応

 

・外出

 行方不明時の対応はどのようになっているか

  不明時の地図作成

  最終確認からの時間

  経過から発見しやすい体制をつくる

 

・事故防止と対策

 ①マニュアル化をする。

 ②ヒヤリハット、事故報告書の分析をする。

 ③チームワークを保つ。

 ④ケアプランの重要性を再認識する。

 ⑤運営管理面での体制を強化する。

 

施設におけるリスクマネジメントの課題

 ・事故防止と対策

 リスクマネジメントの要とは? 職員ひとり一人が、利用者や家族を理解し、知識や技 術を持ち、各専門職とのチームワークを保つことである。

 

在宅におけるリスクマネジメント

 ・事故防止と対策

 介護現場は、施設とは大きく環境が違い、介助、支援しやすい環境ではない。

 ①ヘルパー

  密室性が高い。

 ②デイサービス

  限られた空間、限られた時間での支援は、利用者の変化がとらえずらい。また、日々 の変化が流動的である。

 

利用者、家族にとってのリスクマネジメント

 介護事故を被った利用者、家族が事業者に求めるものは、

 ①施設におけるリスクマネジメントの考え方

  介護事故予防に対する施設の姿勢が知りたい。

 ②介護スタッフの充実

  介護事故が発生しやすい時間、場所が知りたい。

 ③介護事故についての認識( 事故の種類、内容等の捉え方)

  介護事故として捉えている事態が、利用者や家族の認識とズレがあると溝が生じる。

 ④利用者の受け入れにおける情報の把握

  事故を未然に防止するための最低限の情報が知りたい。

 ⑤事故防止に向けての具体的な安全配慮、対策

  事故環境における人的配慮、物的配慮をしているか。

 ⑥事故発生時の対応マニュアル

  緊急的に迅速にかつ適切に対応すべく施設の対応手順を明確にしているか。

 ⑦事故発生時の家族への連絡、対応

  いつ、どのような方法で家族へ連絡するのか。

 ⑧事故原因の調査、説明、再発防止対策の実施

  体制が整っていることの説明は家族が安心をする。

 

・説明責任と利用者、家族の参加

 説明はいつするか?

 

①利用開始時における説明責任

 「当施設ではここが手薄ですから事故が起きるかもしれません」 ではなく、

 「ベットから転落する危険性があるのでケアプランでこのような対応をしています」な ど積極的に情報開示をする。

 

②利用中の説明責任

 施設にお世話になっているという家族の心情はあるが、介護施設利用中における利用 者の心身に生じた変化、異変等について、具体的に説明をしなければならない。日頃からのコミュニケーションが大切である。

 

③介護事故が起きた時の説明責任

 責任の所在を含む介護事故の全容と損害、対応等を最も知りたい、という気持ちがあ る。そのためには、介護事故発生にいたる経緯、その原因と生じた結果、さらには結 果に対する事業者の責任とその対応を伝える。出来るだけ早い時点において説明をしなければならない。

『自分たちの目が届かないところで起きた事故の真相を知りたいだけ』である。

 ①説明があいまい

 ②事故の核心部分の説明がない

 ③説明までに時間がかかった

 ではだめ、利用者の気持ちを十分理解した上で、誠意をもって対応をする。

 

リスクマネジメントの重要課題

 法的視点からの留意点

①利用者のアセスメントとケアプランの定期的見直しの強化。

 ・状況の変化に即応した見直しが必要である。

 ・利用者や家族の参加の下で十分な説明がされ、更新されたケアプランが介護職員全員 に十分な理解がなされ、確実な実践に繋がっているかを確認する。

 

②コンプライアンスルールの確立

 ・法令を遵守する。

 ・サービス提供基準の見直しをする。

  サービスをどこまで提供するのか、事例検討会の積み重ねをする。

 

③利用者の自己決定や個人の尊重

 リスクの回避= 安全の確保は、

 転倒しないように部屋にかぎをかけて閉じこめるか? 抑制や身体拘束が必要になっ てしまう。

 安全確保と権利保障とのバランスをどう調整するかが、重要になってくる。

 ・個人の権利、利益の保証は、

 利用者本位= 自立は、リスク回避と共に、より利用者の権利保護とのバランスのとれた 他の方法を計画し実践する。介護職としての専門性が必要になる。

 

④情報の共有化

 注意義務の中でも予見可能性におけるリスクに関する情報の把握をする。

 その中で、チームとしての情報の共有化を取り組み、定期的なカンファレンスを行い、 日常的な情報共有化への方策を整える。介護職としての専門性が必要になる。

 

⑤説明責任の実施

 利用者の状況はたえず変化するため、サービス利用( 介護) 時の状況を報告し、状況 の変化に応じた、ケアプラン変更時における十分な説明をして意見交換をする。 説明責任は、事故がおきてからでは遅い。

 

⑥記録の重要性

 裁判においては、記録にないことは実施していないことと同じであるため、事実の記 載と評価の記載を区別し、利用者、家族や第三者にも明確にわかるように時系列に沿 って記録をする

 

⑦苦情解決制度などを活用した早期のリスク把握としては、ヒヤリハット報告や第三者 委員制度がある。事業者の抱えるリスク上の問題点の発見にもつながる。

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。