リスクマネジメントの取り組み

平成25年度 第2回リスクマネジメント研修会

 

平成25年度 第2回リスクマネジメント研修会を終えて

 

 リスクマネジメント委員会主催の研修会は、年度内に2回行っています。今年度最後の研修会は、「法人施設でのリスクマネジメント事例検討」と題して、4つの事業所から、気づきへの対応や事故やヒヤリハットに対する事例発表をして、その事例に対して意見交換をしています。

 「おしま学園」からは、利用者の飛び出しと投薬の引継ぎミスについて、「おしま菌床きのこセンター」からは、転倒、転落事故の防止と作業用機械による接触事故の防止、「侑ハウス」からは、薬の渡し間違い事故について、「七重浜保育園」からは、食物アレルギー児への対応について発表されています。発表後の意見交換などは、通所施設の発表であれば、同じ様な系列の通所施設といったように、発表事業所と同系列の事業所からコメンテーターが中心となって行っています。

 

 「おしま学園」からは、通学途中で興奮をした際に、手を繋いでいる職員の手を振りほどいて道路に飛び出してしまう。そうなってしまうと、名前を呼んでも止まらずに走り続けてしまう、という事故がありました。その対応としては、通学路の途中に、道路と平行する場所にロープを張り、一部には砂利を敷いて整備をする。その結果、周囲との区別化が図られ、利用者も通学路を視覚的に理解しやすくなった。また、ロープを張ることで、道路への突然の走り出しを防ぐ役割を持たせることができている。もう一つの事例は、夕食時、内服薬を台所に持って行き、与薬の準備をしている時、当日に帰省をする際に渡し忘れた内服薬(耳鼻科薬)が残っていることに気が付く。すぐに自宅へ電話し、渡し忘れたことを伝え自宅へ届けている。今後の対応として、

・帰省用確認ボードに薬の確認欄を新たに設け、帰省時の薬の有無を判断しやすいようにする。

・薬を入れる小袋に「投薬の引き渡しカード」を貼付する。保護者と薬の確認をした後薬を入れている小袋から「投薬の引き渡しカード」を回収する。

・回収した「投薬の引き渡しカード」を確認ボードの投薬欄に貼り、渡したことを全員が確認する。

 

 この取り組みにより、渡し忘れがなくなり、不具合なく経過するようになる。

 

 「おしま菌床きのこセンター」からは、事故やヒヤリハットに至る前の、気づきの段階での対応や取り組みを中心に発表しています。

・オガクズと栄養体を攪拌する大型のミキサーには、転落防止の鉄製の柵を設け、動作中に柵をはずす、投入用の蓋を開けなどをした場合には、自動的に機械が停止するよう安全装置を設ける。

・培養室にある3メートル程ある棚の上り下りをする際に転落しないよう、足場板を階段状に設置をする。足場板が使えない場所では、台を使用することで安全に作業が出来るようにする。

・きのこの培地を水につける釜のスライド式の蓋を閉める際、手を挟めないように、取っ手部分を大きくし幅を広げることで、手を挟まないように対応する。

・廃棄培地の粉砕機や乾燥しいたけをスライスする機械には、培地や椎茸を投入する所には、直接手で入れないようにベルトコンベアーを設置し、ベルトコンベアーに巻き込まれないように巻き込み防止カバーを設置して対応している。

 

 といった内容の発表がされています。

 「侑ハウス」からは、事故件数の多い、投薬関係が発表されています。職員の間違いから、翌日の朝食後薬を夕食時に渡してしまう。その後、担当医に連絡をとり、服薬内容の調整などの指示を受ける、という事故がありました。

 この事故の分析をすると、

・薬を渡す、担当職員が曖昧であった。

・薬の準備の仕方、渡し方に細かな違いが出てきていた。

・薬の保管場所や入れ物が分かりづらかった。

・薬は、渡す職員が確認するのみであった。

 

 このことへの対応として、

・薬を渡す職員は、宿直者とする。

・薬の準備の仕方や渡し方は、手順を統一する。

・薬の保管場所や入れ物は、同じ場所や物に統一する。

・薬を渡す前の確認は、他寮の職員がダブルチェックをする。

 

 これらをまとめた薬取り扱いマニュアルの作成を行った。その結果、

・以前より、自分の行動に伴うリスクを意識するようになった。

・一時的な投薬の追加の際、付箋と口頭での説明など、マニュアルに無くても必要だと思うことを行い、手順を追加した。

・確認時の薬の変化で、他寮の利用者の様子をその都度話し合うようになった。

 

 今後も、定期的な見直しを忘れずに、さらに徹底した安全対策を進め、職員一人ひとりのリスクマネジメントの意識を高めていくよう取り組んでいきます。

 

 「七重浜保育園」からは、食物アレルギーについて発表されています。延長保育時に本児用の卵なしを他児に、他児用の卵が入っているものを本児に配膳してしまう。アレルギーがあることは知っていたが、忘れていたというヒューマンエラーが発生した。保護者には、卵が入っている物を食べた事を知らせる。家庭では、アレルギー反応はみられていないとのこと。今後の対策として、再度、食べられる物と食べられない物を確認し、アレルギー食は、席に着いてから配膳するようにした。

 もう一つの事例は、おやつ時に卵と小麦入りのクッキーを配膳し食べてしまう。アレルギーは知っていたが配膳してしまう。母親も隣にいたが、本児が1口食べた後に気づく。看護師が滅菌ガーゼで口の中を拭き取る。顔、首、耳に赤い反応が出たため、母親と共に病院を受診する。今後の対策としては、リストを作成し、おやつ収納庫に掲示する。おやつ時は、必要に応じて原材料の確認を保護者にもしてもらう。利用登録用紙にアレルギーの項目を付け加えるようにした。

 アレルギーに対する全体への対策としては、

・職員全体で食物アレルギーの理解と危険意識を高める。

・園内研修の実施。

・毎月1回、献立表をもとに栄養士とアレルゲンとなる食品の確認をとる。

・チェックした献立表と給食室の表示を必ず確認する。

・保護者に健康表を詳細に記入してもらう。

 

 今後の課題としては、定期的にマニュアルを見直し、エピペンを用意しておくことする。

 

まとめとして

 今回の事例では、2つの事業所から薬に関しての事例が挙げられている。2つの施設共に、職員間で薬の準備の仕方や各寮での薬の保管方法が違うといったことから、ミスが生じている。今回の事故では、薬のダブルチェック、保管場所の統一、職員間での周知徹底の必要性を感じる。ダブルチェックに関しては、同じ寮の職員間だけでするのではなく、違う寮の職員が行うところが印象的であった。どうしても、毎日同じ仕事をしている職員同士だと「思いこみ」で安心感が生まれてくる。他寮の職員が客観的に行うことにより、利用者が口に入れるまで「思いこみ」をなくし、リスクを軽減する事ができるのではないか。また、機械を使う日中活動でも、「思いこみ」は厳禁である。機械一つにどの様な危険性があり、どの様な事故が予見できるのか。仕事を行う利用者の特性など、その内容を把握した上で考えるのはもちろん、職員が実際に同じ機械を使用している業者や開発した業者等、専門の人達の意見やアイデアを取り入れていくことが大切であると思う。それを実践しているからこそ、大きな機械を使用している、おしま菌床きのこセンターでは大きな事故が起きていない要因なのかもしれない。

 最後に、今回の研修会の中で印象的だった言葉がある。人間は必ずエラーを起こす生き物である。一人でその全てを食い止めることは不可能に近い。でも、誰かがその手で食い止め、その手からこぼれたエラーを更に他の人が食い止める・・・。といった様に、複数の人間が取り組むことで、エラーは軽減される。これこそが、日々の職員間での取り組みである。マニュアルは作って満足するものではなく、常に改善していく意識しながら取り組んでいく。私たちのミスにより、被害を受けるのは利用者である、ということを頭に入れ、日々の業務に取り組む必要性を改めて感じた。

 

リスクマネジメント委員会 責任者 川又賢一

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。