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法人リスクマネジメント委員会として、年度内に2回の研修会を開催することとなっています。今年度1回目の研修会は、北星学園大学で教授をしていらっしゃる田中耕一郎先生を講師としてお招きをして開催しました。
「障害者福祉サービスにおけるリスクマネジメント」と題し、法人内の各施設や事業所へ案内を送った所、参加申し込みが70名程と過去最多となっています。このことからも、日頃抱えているリスクマネジメントに対する関心の高さや事故やヒヤリハットを何とかしなければならないという緊張感が伺えます。
田中先生のお話の内容としては、新人の職員でも理解しやすいようにと、リスクマネジメント概論として、一般的な定義から離陸し、目的や経緯と流れていき、途中、介護事故と法的責任など重要な避けては通れないお話やリスク・アセスメントを経由して、SHELモデルといった基本的なリスク分析の手法の紹介を交えながら、家族とのコミュニケーションは大切であり、訓練や研修会を通して学ばなければならない、リスク対応策をモニタリングして、もう一度評価し直すことも大切です、という所に着地をしています。
中でも印象に残ったのは、民間企業におけるリスクマネジメントの一般的な目的は、事故に対する法的責任の回避である、これは組織を守るためである。福祉現場におけるリスクマネジメントでは、法的責任を回避し、事業体として存続をすることだけを重視すると、例えば、過剰な身体拘束をする、鍵をいたる所に掛ける、口以外からの栄養摂取をする、といったように、結果として利用者の自由を著しく制限することになってしまいます。ストップ・ルールを適応すると、何もさせないことになる。交通事故に遭うかもしれないから散歩にいかない・・・。つまり、「利用者の安全」と「利用者の尊厳」を、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという、トレードオフ関係で捉えても良いものなのか。利用者の尊厳を守るための、リスクマネジメントが福祉の現場には求められている。また、普通の暮らしが損なわれてしまわないように、利用者を尊厳しつつ、なおかつ、安心で安全なサービスを提供すること、この両者を可能な限り両立させるというスタンスが、福祉現場のリスクマネジメントには必要である、というお話でした。
「最大限に利用者の尊厳や権利を尊重しつつ、なおかつ、安心で安全な支援を提供することを目指すところに、福祉現場におけるリスクマネジメントの真骨頂があるのです」という田中先生の言葉をお借りして終わりとさせて頂きます。
星が丘寮 川又賢一