リスクマネジメントの取り組み

第二おしま学園 (2010年12月)

 

第二おしま学園の気づきメモから

 

 第二おしま学園は、昭和53年に開設された、第2種自閉症児施設です。入所定員は40名で、おしま学園分校に通学している方と、ウエス作り等の作業をしている方々が生活しています。

 

 提出された気づきメモから、事故予測の割合をデータにすると、転倒や異食・無断外出、器物による事故といった項目、他害とその他 、全てにおいてほぼ均等になっています。又、事故報告の提出状況では、他害・無断外出・転倒(第二おしま学園の三大事故)といった項目が多く提出され ているにも関わらず、気づきの段階での提出数は事故報告と比例するかたちで突出してはいません。又、事故報告書では、今年度は器物による事故の報告 は殆ど無いにも関わらず、気づきの段階では三大事故に迫る位の高い数値を示していることも特徴として挙げられます。

 

項目ごとの分類

1)異食

 今回の気づきメモの提出の中で一番多く提出された項目が、「異食」である。内訳としては、全体の24パーセントを占めている

 <場所的割合>

 ・食堂  94%

 ・居室   6%

 

 場所的なパーセンテージからもわかるように、異食に関しては、食堂での「気づき」が圧倒的に多く提出されている。 内容は、残した物や他者の食べこぼした物が多く、食堂では紙片やプラスティックの報告は挙がっていない。
又、提出数は少ないが、居室では、木片やプラスティックといった物の気づきが挙がっている。
※又、特殊な例としては、家庭から持ってきたお菓子の中にあった保存剤も挙げられている。

 

2)器物による事故

 今回の提出では、その占める割合が高いことでひとつの項目として挙げている。
全体的なパーセンテージは10パーセントである。

 <場所的割合>

 ・居 室    27%

 ・ホール(食堂) 66%

 ・作業棟    2%

 ・浴 室     5%

 

 以上が場所の占める割合である。
割合の中では、ホール・食堂での事故に対する予測が多くなっているが、これはホール・食堂には人の集まる機会が多く、又、様々な物が数多く置かれていることが要因として挙げられる。
事故内容としては、器物による裂傷を予測しているものが多く、支援者が置き忘れた物(一部業者)や食器の破損によるものが多くを占めており、次いで器物等の落下によるものが挙がっており、破損箇所等の報告は少なかった。
※一部、転倒して、器物にぶつかり裂傷することも含まれるものである。

 

3)無断外出

 全体のパーセンテージは16パーセントである

 <場所的割合>

 ・作業棟     2%

 ・玄 関    92%

 ・寮入り口    6%

 

 第二おしま学園の三大事故である「無断外出」であるが、気づきメモにおいてはそれほど提出数が多くなっているわけではない。 しかし、内容を考察すると、鍵を長時間閉め忘れている等の報告は挙がっていない。むしろ、事故の割合が高いことで、支援者が事故を起こさない ように意識できていると思われる。それは、事故が起こるかもしれないということに気づけている内容が殆どであるため、すぐに鍵を閉める、 鍵を掛けないで移動しようとしたことを伝える等の迅速な対応ができていることから理解できる。又、外部からの出入り等でやむを得ず鍵を開放し ている場合は、利用者の動きに気を配るような対応が記載されている。

 

4)転倒

 全体のパーセンテージは18パーセントである。

 <場所的割合>

 ・浴室(脱衣所も含む) 15%

 ・廊 下    22%

 ・洗面所    28%

 ・台 所    21%

 ・ホール    23%

 ・作業棟     1%

 第二おしま学園の三大事故である「転倒」の項目である。事故内容の内訳としては、水周りでの転倒を予測しているものが殆どである。 その為、発生場所に関しても水を使用する場所がメインとなっている。一部寮の仕切り部分が壊れていることや、職員が片付け忘れている物での 転倒も予想されている。

 

5)他害

 全体のパーセンテージは12パーセントである。

 <場所的割合>

 ・居室    15%

 ・ホール   26%

 ・廊下    29%

 ・食堂    17%

 ・外出先   13%

 第二おしま学園の三大事故である「他害」の項目である。事故の報告としては数多く報告される項目であるが、気づきの段階では、 それほど提出数は多くない現状にある。原因としては、利用者の状態に左右されるケースが多いことと、他害を行う利用者がわりと限られている点が ひとつ挙げられる。最重度 自閉症といった利用者の場合は原因を特定することも難しい場合があることと、突如興奮してすぐに他者へと向かい対応が 遅れてしまうことが多い現状から、なかなか気づきメモの段階で終了するケースが少ないことが挙げられ、事故やヒヤリハットに発展していることが 多くなってしまっている。このことからも、支援者は日々、利用者の状態には充分な配慮を心がけ、クオリティーインプルーブメントの視点を忘れる ことなく、より良い生活を目指して支援していくことが望まれる。

 

6)その他

 全体のパーセンテージは20パーセントである。
この項目に関しては、様々な項目と分類があるため、ひとつにまとめたものである。その為、全体を占める割合も高くなっているが、 大きな事故に繋がるようなケースは極稀であり、そのようなケースに関しては充分な予防対策と対応がなされている。内容としては服薬に関すること、 ストーブの設定による火傷や脱水、熱中症や車道への飛び出し等による交通事故などが挙がっている。

 

(2010年12月 第二おしま学園)

※気づきメモとは、事故やヒヤリハットに至る前に日常に潜んでいる危険に気づき、予想される事故に対して事前に対応をすることで、大きな事故を未然に防ぐ事を目的とされています。